本当に「軍事的脅威」が理由か?
普段はワタシも「中共の言う事はいつもウソばかりだ」とか言うてますがね、この件だけはなんか釈然とせんのですわ。
ヤマハ発動機・不正輸出疑惑:中国の企業が声明、「軍事転用できぬ」-MSN毎日インタラクティブ より
【北京・飯田和郎】ヤマハ発動機が中国の企業に無人ヘリコプターを不正輸出しようとしたとされる外為法違反事件で、輸出先の「北京BVE創基科技有限公司」(BVE)は25日、ホームページ上に声明を出し、「(同社は)純粋な民間企業であり、技術の軍事転用は不可能。軍に製品を提供したことは一切ない」と強調した。
このBLOGでいろんな記事にそこはかとなく疑問を小出しにしてきましたが、どう考えても釈然とせんので単独記事にします。どうぞ批判でもなんでもしてください。ただし、ただ単細胞的に「売国奴」と叫ぶだけの感情的で非論理的なもの(どこのサイトを覗いてもこればかりなような気もするけど)ではなく客観的なものが希望だけど。
今回問題になったのは「RMAX L181」で、こいつの常用高度は150m以下、操縦可能範囲は半径200m以内とされています。GPS機能を利用した自動飛行も限定的な仕様となっており、この程度の性能を持つ機体が中共本土で運用されたとしても、いったい日本国または日本国民に対してどのような具体的脅威が増すのでしょうか。
ちなみに無人兵器で有名どころといえばアメリカ空軍のそれが思い浮かびますが、たとえばRQ-1A ティアⅡ プレデター、コイツの性能は「最大離陸重量1035kg、最大航続距離740km(400海里)、巡航速度130km/h(70kt)、最大速度216km/h(120kt)、最大上昇限度7620m(25000ft)、最大稼動時間40時間、通常作戦高度600m(2000ft)、最大武器搭載量450ポンド(203kg)」で完全自律飛行が可能なんですよ。極端にいえばヤマ発の無人ヘリの性能が子供の玩具にしか見えませんよ。
たとえ人民解放軍がヤマハの持つ“極秘の超先進技術”を解析して性能をさらに増強した無線操縦ヘリを独自開発したとしても、まさか完全自律飛行で渡洋攻撃が可能になるとはとても思えません。
なんか背景にアメリカの意を汲んだ経済産業省のゴリ押しがあったんじゃないかという憶測もありますが、よくわかりません。なんでも日本の農業用無線操縦ヘリの技術は世界でも図抜けており、中共市場への参入を狙うアメリカの同業が政府筋を動かして圧力をかけたんではないか、という事らしいですが、本当かどうかはわかりません。
ただ、ヤマ発側も輸出に当って機種を市販の「RMAX Type2G」(常用高度5m以下)に偽って申請したという話もありますから、やや後ろめたい部分もあったようで、その意味では完全に無罪とは言いませんが、たとえそうであっても今回の摘発はなんか不自然であることはワタシは否定できませんね。
この無人ヘリの技術が軍事転用されて日本国及び日本人に対する軍事的脅威になるというのなら、その前に市販されているモデルを軽量化及びエンジン出力アップ(2ストロークエンジンの整備経験のある人なら簡単に出力アップはできますから)、制御無線の発信出力増大の改造などで、運用高度と操縦可能半径を能力アップさせて、前にも書いたように皇居襲撃に簡単に使えたりしますよ。そっちの方がよほど日本社会にとっての現実的脅威なんだけど、官憲は農業用無線操縦ヘリの販売先リストを完璧に把握していたりするのでしょうか。マスコミやヤマ発批判をするBLOGGERの皆さんは、当然そういう要素まで十分考えた上で今回の件を批判しているのだろうとは思いたいですが。
基本的に軍事転用ができない技術なんてどこにもなく、あらゆる製品がやろうと思えば大なり小なり「軍事転用」が可能だろうと思うんで、このコトバを安易に使って叩くのははたしてどうかと思うんですよ。ヤッパリ何か腑に落ちません。
で、「軍事転用による戦力の変化」が問題ではなく「日本の法規に違反した事」が問題なんだ、と言う人がいますが、「エアゾールを噴霧できるように設計した無人航空機であって、燃料の他に粒子又は液体状で20リットルを超えるペイロードを運搬することができるもののうち、次のいずれかに該当するもの イ.自律的な飛行制御及び航行能力を有するもの ロ.視認できる範囲を超えて人が飛行制御できる機能を有するもの」の場合が規制の対象なんであって、当該無線操縦ヘリコプターがはたしてこの規定に該当するか否かは、搭載されている「自律航法装置」の性能評価如何で決まるものであり、その意味では完全に「日本の法規に違反した」と断言できるかどうかはかなり疑問が残ります。
【参考】
安全保障貿易管理HP
(その2)に続きます。
投稿者 青柳 洸 at 午前 12時03分 特定アジア-中共その2, 社会その06, 経済その3 | Permalink | この記事へのリンク
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コメント
無人機ってのはどうしてもEMPに弱いですからねぇ
投稿 | 2006/01/27 1:14:13
今回の件、重要なのは無人ヘリを輸出したことではなく、無人飛行を可能とする機材を使ったヘリを輸出したことが問題なのかと。自動で飛ばす技術そのものを1から作るのは大変ですが、ラジコンヘリを自動で飛ばせる技術があれば、普通のヘリを自動で飛ばせる技術まで引き上げるのはさほど難しくないからだと思います。
あと、ヤマハは輸出ヘリの性能を低く申請していたようなので、実際は法律に確実にかかるのだと思いますよ。
投稿 | 2006/01/27 8:19:58
確かに、この件はいろいろと見えてないところが多いので続報待ちですな。
無人ヘリを1から作るよりも、実際にあるものを改良したほうが効率的ですから、一概に脅威にならないと考えるわけにもいきませんが。
投稿 しわよせん | 2006/01/27 8:56:53
匿名ご希望さんは大変リモート制御技術にお詳しいようですからお尋ねしますが、見通し距離でしかコントロールできない無人ヘリの技術をどのように改良すれば見通し距離を越えた距離で「普通のヘリを自動で飛ばせる技術まで引き上げるのはさほど難しくない」のでしょうか。
浅学のワタシにわかりやすくご教授ください。
投稿 青柳 洸 | 2006/01/27 12:22:47
皆様にもう一つお尋ねです。
せいぜい半径数キロの制御範囲しか持たない無人飛行体によって中共の本土内で化学兵器や生物兵器を撒き散らされる事が、専守防衛を旨とする日本国及び日本人にとってそれほど脅威の度合いが高いのですか?(中共国内の少数民族や反乱農民を弾圧するのには最適かもしれませんので、道義的な問題はあるかもしれません)
このヘリの技術をもって渡洋攻撃(偵察)可能な完全自律飛行体に昇華させるのにはかなり無理があると思うのですが、それでもやっぱり脅威なのかなあ。
日本に侵攻された時に脅威になるって?実際に着上陸侵攻されたら、そんな兵器のあるなしで脅威の度合いが変わるモノじゃないと思うのですが。
投稿 青柳 洸 | 2006/01/27 12:30:31