皇統とY染色体
下に引用した記事の先生方はこういうY染色体に関する著述に対してどういう見解をもたれるのだろうか。
The future of sex Nature, 415:963 (February 2002) R. J. Aitken & J. A. Marshall Graves より(注:リンク先はPDFファイルです)
Y染色体の特徴は遺伝子の欠落が起こりやすい点であろう。なぜならば、X染色体と相補的ではないため、組み換えによって欠損部分を補えないからである。過去3億年の哺乳類進化の歴史を見ると、最初X染色体より派生したと思われるY染色体であるが、徐々にその遺伝情報を失い、今や当時の姿は見る影もない状況である。Y染色体上に現在残っている遺伝子は、性の決定と精子形成に関わる遺伝子のみである。
もともとY染色体には約1500個の遺伝子があったと見積もられている。その後、3億年の間に、現在残っている50個ほどの遺伝子以外、すべて不活性化されるか、または、完全に欠落している。平均すると100万年で5個の遺伝子が失われたこととなる。このまま同じ速度で遺伝子の欠落が続くと、重要なSry遺伝子(精巣の決定因子の本体)なども失われ、あと約1000万年でY染色体の遺伝子すべてがなくなる計算となる。
上記の引用の立場から言えば竹内久美子さん言うところの「皇室が成し遂げているのは千数百年にもわたり、ほとんど同じ『Y』を受け継いだということ」というのは、個体ごとの変異という現象を念頭に置いた場合には少々非科学的じゃないでしょうか?
それより以前に、神話上の神武天皇のY染色体上の遺伝子が今上陛下のY染色体にも格納されていると信じている事自体が、もうなんというか素晴らしく非科学的ですわな。
宮内庁が歴代天皇の墳墓の学術的研究を拒否しているのは、「墓を暴くのは不敬に当る」という理由以外に、皇統を科学的にたどられると伝説が否定される事を恐れているとも受け止められるわけで、男系維持派は「Y染色体承継論」が自爆理論にもなりかねないということを認識すべきじゃないかなあ。
Y染色体理論を声高に主張し過ぎると皇統が維持されていることを科学的に立証しなきゃいけなくなるんじゃね?上記の変異の話でもし遺伝子情報が欠落しちゃってたらどうするのさ。よしんばそうでなくても、神武天皇の遺伝子情報ってどこにあるんだ?どうやって遺伝子情報の継承を証明するの?
普通に「科学的云々ではなく、あくまでこういう伝統なんだ」としておくだけの方が安全だとは思わんのかな。まあ、爺さんたちは小難しい事を無批判に信奉したがるからね。生兵法は怪我のモトだと思うけど。
やっぱり皇統論、特に男系論者のそれをウォッチするのは面白いね。今では天皇は神話ではなく「象徴天皇制」という日本国憲法に裏づけされた社会的制度になってるんだけどなあ。
「象徴」なんだからさ、日本社会の実相を象徴しててもいいんじゃね?これはヒトリゴトですけど。
Sankei Web 産経朝刊 皇室典範改正勉強会 「Y染色体」の重要性指摘 男子皇族、代々受け継ぐ(11/30 05:00) より
超党派の保守系議員でつくる日本会議国会議員懇談会(平沼赳夫会長)は二十九日、国会内で皇室典範改正問題に関する第二回勉強会を開いた。この中で、父方の系統に天皇を持つ「男系」による皇位継承の重要性について、遺伝学の立場から説明する際に用いられる「Y染色体」理論をどう考えるべきかが取り上げられた。「男系でなければ血を継承できない」(八木秀次・高崎経済大助教授)一つの根拠とされる「Y染色体」とは何なのか。専門家の話を交えて検証した。◆◇◆
「男系の意味をどう理解するか。Y染色体で説明すれば国民の理解は進むのではないか」(自民党の石田真敏衆院議員)
「女性の立場からすると、Y染色体論はむしろ分かりにくい」(同党の稲田朋美衆院議員)
この日の勉強会では「Y染色体」をめぐって意見が割れ、講師の大原康男・国学院大教授が「それよりも男系で二千年間継続してきた重み、事実を考えなければならない」と引き取った。「Y染色体」については、「皇室が成し遂げているのは千数百年にもわたり、ほとんど同じ『Y』を受け継いだということ。われわれが直面しているのは、千数百年もの間純粋に受け継がれてきた『Y』を、いま絶えさせていいのかという問題だ」(動物行動学研究家の竹内久美子氏)など、重要性を指摘する向きもある。ただ、一般にはまだなじみが薄い。
専門家はどう見ているのか。同志社大ITEC(技術・企業・国際競争力研究センター)の蔵琢也研究員(進化生物学)によると、女子のXX型は遺伝子が混じり合うため、世代ごとに祖先の遺伝子が薄まっていくが、男子のXY型はY染色体が親から子へと完全な形で伝わる。
このため、蔵氏は「血のつながりとは、科学的に言えば遺伝子の共有率だ。男子皇族だけに代々受け継がれてきたY染色体は姓や家紋に似ているといえる。しかし、体の細胞に刻印されているという意味で、はるかに強い実体をもつ」と説明。さらに「皇室には、(初代)神武天皇以来、Y染色体という刻印が連綿と受け継がれてきた。国民や世界の人々はそれでこそ皇室の中に二千年の歴史の重みを感じる。女系相続は、過去と現在の遺伝的なつながりを断ち切るという意味で間違いだ」と話している。
投稿者 青柳 洸 at 午後 05時10分 社会その05 | Permalink | この記事へのリンク
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コメント
毎日読ませて頂いております。いつも興味深い話題をアップして頂き、有難う御座います。
書き込みさせてもらうのは初めてなのですが、どうしても頭から離れない素朴な疑問がありまして、書き込みさせて頂く次第です。
皇室の血筋が真実ひとつの血筋で繋がっているかどうかの真偽はさて置き、
確立だけで考えますと、初代天皇と今上天皇のY染色体遺伝子の差は(皇紀2600年近くが正しいとして)0.013個だけ、と言う結論にはなりませんでしょうか?
私の読解力の無さ故の思い違いであればお許し下さい。
投稿 K3 | 2005/11/30 21:03:01
平均ではそうなりますよね。
突然変異に関して集団全体ではなく個別の変異可能性について平均で語るのはあまり意味のないような気もしますし、たとえそうであってもわずかとはいえ変化は確実の起こっているわけですが、何よりも遺伝子の継承を科学的に議論するうえで「皇室の血筋が真実ひとつの血筋で繋がっているかどうかの真偽」を考慮の外に置くこと事自体が最もナンセンスだと思いませんか?
それこそが「自爆の危険性」と思うんですがどうでしょうか。
投稿 青柳 洸 | 2005/11/30 21:51:49
お初で割り込みですが失礼させて頂きます。
>今では天皇は神話ではなく「象徴天皇制」という日本国憲法に裏づけされた社会的制度になってるんだけどなあ
ここは主体をどちらに置くか論点が逆転してないでしょうか?
憲法があったから天皇制が出来たんじゃなく
天皇が居たから 法で規定したわけで。
本来なら 法の方を天皇の実情に合わせるのが道理かと。
投稿 Qajin | 2005/12/01 0:02:48
当然憲法改正は「国民の総意」ですからね。道理かどうかは「国民」が決める事です。
条文の出自がどうあれ現行憲法が厳然と規定しているのが「象徴天皇制」です。国民の大多数がその仕組みを捨てて「国教祭主天皇制」とか「天皇親政制」という形を取るべき、ということになったらそういうことでしょう。
まあ、必ずしも天皇制マニアではない今の日本国民がそういう転換(復古?)を選ぶとはあまり思えないですが。
もし「象徴制」という社会制度を維持するのならば、現代日本社会の象徴たる形で座をお譲りになればいいんじゃないかと思うだけです。
ワタシ自身は男系だろうと女系だろうと昭和天皇及び今上陛下の血筋を引いていればあとは気にしない(無論Y染色体の塩基配列の内容も)、という立場だし、仕組みについても、「象徴」でも、「国教祭主」でも、「親政」でも、またはそれ以外でも天皇制を廃絶しない限り全く構いません。
何はともあれ時限爆弾は「非嫡系継承の否定(側室制度の廃止)」が決まった瞬間から時を刻んできたんでしょうね。多分に偶然に委ねた仕組みが破綻するのは時間の問題だったわけですから。
「時をかけて議論すべき」とおっしゃる方は、その決定以来いったいどういう議論をされてきたのでしょうか。そこは疑問ですね。
投稿 青柳 洸 | 2005/12/01 0:57:09
Y染色体を保持できるのは男性だから云々はどうでも良いのでこれについてはパスしますが 女性天皇については陰謀と考えています。
数十年経て出てきてる女性天皇容認だと確信しています。今の殺人マンション詐欺事件も阪神大震災後に芽是生えた村山山羊総理時代に始まり橋本ポマードによいり民間検査機関が成立して小泉白髪ライオンで発覚したのです。これは男女共同参画、人権擁護、外国人参政権などと一体化する前触れになります。将来愛子天皇が在日の地方公務員男性と結婚する可能性が生まれます。その時に真の日韓友好条約成立でしょうねー。皇室を乗っ取り、日本を崩壊させます。先日の裸の王様状態の皇室の結婚式を拝見して悪夢を見ました。
投稿 ようちゃん | 2005/12/01 2:18:35
あえて申し上げましょう。
> 将来愛子天皇が在日の地方公務員男性と結婚する可能性が生まれます
何か問題でも?
彼女が選んだのであればそれはそれで仕方ないのでは?
投稿 青柳 洸 | 2005/12/01 6:40:22
Y染色体が懐疑に値することはわかりました。
ですが何故女系にしても良いとなるのでしょうか?
Y染色体の理論を論破したとしても「女系でOK」にはならないような気がしますが・・・。
投稿 flax | 2005/12/01 11:46:47
> ですが何故女系にしても良いとなるのでしょうか?
ワタシがいつそんなことを言いました?
男系、女系にこだわらず、現代の国民の大多数(少なくとも過半数)が納得する方法ならなんでも良いと思っているだけなんですが。
強いて言えば、男系絶対維持論者が陰謀論を持ち出したり人権擁護法案や外国人参政権問題にまで無理やり絡めるなど、まるでかの国のヒトが火病を起こしたかのようにヒステリックに喚き散らしているのに失笑を禁じえない、ってのもあります。
投稿 青柳 洸 | 2005/12/01 12:12:21
ご返答いただきありがとうございました。
投稿 flax | 2005/12/01 12:34:54
天皇の後継問題は、皆さん色々意見があるでしょう。
よく歴史的な事を織り交ぜ意見する人もいますが、歴史を見るに、たかが国民(平民)が皇室の後継問題をグチャグチャ言った時代も無いと思います。
私は、皇室の永遠の繁栄をただお祈りいたします。
投稿 NZ life | 2005/12/01 13:23:52
そもそも「Y染色体論」自体が、女系(両系化)容認派の「男系継承には根拠も意味も無い」という論に対しての「いや少なくとも科学的な視点ではY染色体が云々」という自衛的反論として主張された感があります。今やすっかり主客が逆転してY染色体至上主義みたいになってるのは、確かに危険かと。
あくまでY染色体論は「男系継承との類似概念を科学的にわかりやすく表現した後付け理論」であるという事は、男系支持派も肝に銘じるべきでしょう。
まあ、両系化容認派はそもそもミレニアムをも超える「継承事実の蓄積」をすら「たまたま続いただけ」と切って捨てられるメンタリティの持ち主が少なくないので、彼らにはどのみち通じないのですが。
一般の人々に対しては、「「男系の万世一系」とは、「Y染色体の2600年を超える継承」と言い換える事もできます。更新中の世界記録です」くらいにフランクな言い方をして理解を求めてもいいのかもしれません。……かなり不敬ですが(汗)
投稿 Tamanegi | 2005/12/01 16:54:18